修羅の国の新生活

お題「#新生活が捗る逸品」

仙台から小倉(北九州)に引っ越した。

仙台は坂だらけ、いやむしろ山だった。山の上の職場に通勤することとなって、持ってた3段変速のママチャリで頑張って2年通った。引っ越し貧乏だったので2年ちまちま貯金して、やっとこ原付買った。仙台、圧倒的車社会なんで行きたい店も安い店も、車ないと行けない、山だし! そんなわけで2年がまんした行きたいとこ行きまくったよ原付で。いちばん遠くまで行ったのは大河原の一目千本桜だった。さむくて死ぬかと思ったしそれ以前に市内でガソリン入れそびれたらその先ずーっとガソスタなくて、ガス欠で原付が死ぬかと思った。ファンヒーターの灯油が切れた深夜、凍結した道をおそるおそる灯油買いにいって坂道で死ぬかと思った。雪の朝の通勤時、定禅寺通りから晩翠通りに左折しようと思ったらわだちから抜けられず、焦ってハンドル切ったら完全にコントロール失って歩道の雪の壁に突っ込んでコケた。夏のゲリラ豪雨の中帰宅途中、西公園通りから中ノ瀬橋へ左折中になぜかエンストして何とか路肩に寄せて歩いて帰った。仙台の思い出は原付と共にあり、だいたい死ぬかと思ってた。大好きだよ仙台また住みたい。

 

で、仙台から小倉に引っ越したときも、なんとか激安で運んでくれる業者みつけて、九州まで連れてきた。東北から九州て…ほとんど外国ですやん、という転居にビビりまくっており、なにかひとつでも、新しい街でも変わらず一緒に歩いてくれる存在がほしかったのだ。

しかし暮らし始めてわかったのは、原付に乗る機会がほとんどないことだ。小倉の街は都市機能が中心部にコンパクトにまとまっていて、地形も平坦なので、自転車でほぼ生活が完結するし、モノレールと西鉄バスで大抵のところへ行ける。

ぶっちゃけ自転車のほうが小回りきいて便利だよなあ、と思いながら、ほとんど無理やりちょっと郊外のカフェとか大きいホムセンに行ってみたり。それすらこのコロナ禍では思うようには行きづらい。

 

ある夜。「警察24時」が、たまたま仙台北署と住んでたあたりの街の風景なもんで見入っていたところに電話かかってきた「駐輪場に原付がないよ!」って。テレビの仙台北署から、リアル小倉北署に出向いて盗難届を出すハメにあった。

皆目見当つかぬ新生活を支え合う相棒だったはずの原付は、この街の生活にはちょっとオーバースペックで、任意保険やら諸々の整備費やらを少々重く感じ始めていた。コロナ禍になんとか新しい仕事を見つけ、行きつけの店とかかりつけ病院を一通り見つけて、なんとか生活が回り始めたかな、というタイミングを見計らったかのように、原付は姿を消した。

盗難届を出してから1ヶ月くらい、今まで通り原付のキーは家の鍵と一緒に持ち歩いていた。盗まれたとか勘違いで、自分でどっか乗ってって置き忘れたんだとしか思えなかった。だけど行きそうな場所を一通り何度見に行っても、どこにもいなかった。

廃車届を出し、保険解約の電話をかけ、書類を取り寄せ、書き…手続きを一歩進めるたびに、ああもういないんだ、という現実が迫ってくるようで、おそろしく気が進まない。もうポストに投函するだけの封筒がいつまでも手元にある。失ったのは原付であり、そして本当に本当に大好きで離れたくなかった、仙台の暮らしだった。

 

…前置きが死ぬほど長かった。そんなわけで新生活が捗る逸品は、自転車です。

馬借のクエストまで。ニトリまで。チャチャまで。リバーウォークまで…原付で覚えてた時間の感覚を、自転車時間に書き換えていかなきゃない。すっかり塗り替えられたころに、やっとこの街に住んでる実感が持てるのだろうか。

ちなみに買ったのはこれ。本気の坂がないこの街にちょうどいい。あと、もう自宅駐輪場で盗まれたくないんで、家ん中に置いとける軽いやつな。

修羅の国で生き延びてやる。

https://www.cb-asahi.co.jp/lp/products/ownbrand/weekendbikes/